「将来の夢」について聞かれたとき、すぐに自分の夢について話せる人はどれくらいいるでしょう。
『和菓子のアン』の主人公、梅本杏子もその1人。
高校を卒業する時期になっても、その先のことについては白紙のまま決まりません。
そんな杏子のことを心配する親や先生。
大学へ行くほど勉強は好きではない、専門学校へ行くほど好きなことも見つからない、就職するというのもピンとこない…。
大学も短大も、専門学校もたくさんあるけれど、自分のやりたいことがわからずに悩む中学生や高校生は多いと思います。
そんなとき『とりあえず大学へ行く』、『大学に行ってから考える』…このような考え方もあるけれど杏子は自分なりに考え、アルバイトをしながらピンとくる何かを探そうという答えを出します。
周りの風潮に流されることなく、目の前にある悩みや問題一つ一つに真剣に向き合う杏子。
今回は、中学生・高校生の読書感想文の本にもぜひおすすめしたい、坂木司さんの小説『和菓子のアン 』を紹介します。
『和菓子のアン』のあらすじ
高校を卒業する前に受けた街頭インタビュー。
進学も就職もいまだに決まらない杏子(きょうこ)は将来の夢を聞かれ、戸惑います。
「ピンとくる何か」を探すために大学へ行く…そんな考え方もあるかもしれない。
でも父親や母親の働いている姿を見てきた杏子は、お金をかけて大学へ行きながら「ピンとくる何か」を探すのはどうかという思いを持ちます。
アルバイトをしながら将来について考えることにした杏子が選んだのはデパート、東京百貨店の地下1階にある和菓子屋さん『和菓子舗・みつ屋』でした。
個性的な椿店長、イケメンなのに乙女な社員の立花さん、元ヤンのアルバイト桜井さんに囲まれ、杏子は和菓子について、接客について勉強するように。
知れば知るほど奥が深い和菓子の世界。
和菓子に、お客様に、共に働く先輩たちに育てられ、杏子はどのように成長していくのでしょうか。
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主な登場人物
梅本杏子(うめもと きょうこ)
大学や専門学校に進学したい理由が見つからず、かといって就職することにも違和感を感じるまま高校を卒業した18歳。
アルバイトをしながら「ピンとくる何か」 を探そうと、デパート東京百貨店の地下1階にある『和菓子舗・みつ屋』で働くことに。
ぽっちゃり体型で、男性のことが苦手な女の子。
椿はるか(つばき はるか)
東京百貨店の地下1階にある『和菓子舗・みつ屋』の店長。
休憩時間にバックヤードに入ると、お店に立つときとは別の顔を持つらしい。
立花早太郎(たちばな そうたろう)
東京百貨店『和菓子舗・みつ屋』の男性社員。
イケメンなのに乙女な一面を持つ。
職人希望ということもあり、和菓子には詳しい。
桜井さん
東京百貨店『和菓子舗・みつ屋』の女性アルバイト店員。
元ヤンで、大学に通う傍ら『みつ屋』で働いている。
杏子よりも1か月ほど前に入った先輩。
感想
高校を卒業後、和菓子という新しい世界に飛び込んだ杏子。
ひと言で接客といっても、その奥の深さには驚くものがありました。
お菓子の名前や値段、味を覚えることにはじまり、それぞれのお菓子の由来にお客様に対する言葉遣い。
和菓子を買いに『みつ屋』の店頭に訪れるお客様は皆違う目的でやってくるので、気を抜く暇もありません。
毎日が勉強の連続。
それでも、周りの先輩たちに1つ1つ教わりながら懸命に仕事に向き合う杏子。
悩むことはあっても前向きで勉強熱心な姿は、私たち読者にもとても魅力的に見えました。
謙虚であること、そして誠実であること。
新しい世界に飛び込んだときには、特にこういった気持ちを忘れてはいけませんね。
『和菓子舗・みつ屋』で働く椿店長や社員の立花さんの持つ仕事に対するプロ意識は、アルバイト店員の桜井さんにも杏子にもしっかりと伝わっています。
今はわからないことが多く慣れない仕事でも、この姿勢で仕事を続けていればきっと伸びていくのではないでしょうか。
背伸びをせず等身大で頑張る杏子の今後の成長が楽しみです。
まとめ
今回は、坂木司さんのおすすめの小説『和菓子のアン 』を紹介しました。
小説『和菓子のアン』 はその後続編の小説『アンと青春 』に続くほか、猪狩そよ子さんによる漫画にもなっています。
興味のある方はこちらも合わせて読んでみてはいかがでしょう。
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