来週一週間、私のお弁当を作ってくれない?
私の一週間のランチのコースと取り替えっこするの。
職場の上司、アッコ女史からの有無を言わさない口調に、気がつくと交渉は成立。
昨日恋人に振られたばかりの三智子でしたが、悲しみに浸る暇もありません。
月曜日から金曜日までの約束でアッコ女史へのお弁当を作り、三智子は一週間、指定されたランチコースをまわることになりました。
しぶしぶ始めたランチの取り替えっこ。
気乗りのしない三智子でしたが、約束の金曜日になる頃には…。
今回は表題作を含む全4編の小説、柚木麻子さんの作品の中でも人気のある『 ランチのアッコちゃん 』を紹介します。
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『ランチのアッコちゃん』のあらすじ
月曜日から金曜日まで、ランチに行く店もメニューも決まっているというアッコ女史。
アッコ女史とランチコースの取り替えっこをすることになった三智子は、さっそく月曜日から指定されたランチコースをまわりはじめます。
月曜日に向かったのは、カレーの専門店ビスマルク。
スパイスの香りのする店内。
香ばしく、濃厚な香りに三智子は久しぶりに食欲を感じます。
これまで外食はお金の無駄だと考えてきた三智子でしたが、マスターの作るスパイスの効いたカレーを食べるうちに、誰かに作ってもらう食事もいいものだと気がつきます。
続いて火曜日。
お弁当と引き換えに渡されたのは、ジョギングウェアとシューズでした。
トイレで着替え、駆け足で国際フォーラムに集まるワゴン車の屋台まで走ります。
久しぶりのジョギング。
自分と会話しながら、ゴールのスムージーの店を目指します。
月曜日のカレー店に続き、スムージーのお店でも、アッコ女史の意外な一面を知る三智子。
水曜日、木曜日、金曜日…と、ランチとアッコ女史を取り巻く人たちにふれるうちに、三智子の心の中はどんな風に変化していくのでしょうか。
主な登場人物
澤田三智子(さわだ みちこ)
東京・麹町の外れにある、小学生用の教材を専門に扱う株式会社雲と木社の派遣社員。
アッコ女史と同じ営業部で営業補佐をしている。
アッコ女史こと、黒川敦子(くろかわ あつこ)
株式会社 雲と木社、営業部部長。
45歳の独身。
黒いつやつやのおかっぱ頭をしていて、アッコさんと呼ばれることも。
仕事中は私語もなく業務に集中。成果を上げるため職場では恐れられている。
感想
魅力的な人のまわりには魅力的な人が集まる。
失恋したばかりの三智子でしたが、 アッコ女史とそのまわりに集まる人たちと関わっていくうち、次第に固まっていた心がほぐれていきます。
職場ではクールに振舞っているアッコ女史が、本当は自分のことを心配してくれていたこと。
心がほぐれていくにつれ、アッコ女史の優しさにも徐々に気がついていきます。
アッコ女史のペースで強引にはじまったかのように見えたランチコースの取り替えっこにも、三智子のことを気にするアッコ女史のさりげない優しさが隠れていたんですね。
元気を取り戻していく三智子のことを温かく見守るアッコ女史。
このべったりでもない、付かず離れずの関係が、三智子を1人の働く女性として成長させていくのだなと感じました。
人を育てるとはこういうことなのかと思うところもあり、こんな上司がいたら若い人たちもさぞかし心強いのではないでしょうか。
まとめ
今回は柚木麻子さんおすすめの小説『ランチのアッコちゃん 』を紹介しました。
表題作の『ランチのアッコちゃん』をはじめ、テンポよく話が進む全4編。
読むと元気が出てくる小説です。
『ランチのアッコちゃん』は、2015年にNHKのBSプレミアムでドラマ化もされました。(蓮佛美沙子さん・戸田菜穂さん出演)
小説はシリーズ化されており、現在『3時のアッコちゃん 』と『幹事のアッコちゃん
』の2冊が続編として出ています。
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